まどろむまどログ   - 「快」を求める日々の記録 -

日々の暮らしを心地よいものにしてくれるモノ・コト・ヒトの記録です

6/29(水)『クレアモントホテル』を深谷シネマで観てきました

下の写真は、昨日(6/29・水)午後4時少し前の「深谷」駅前の空。
入道雲がもくもくと。まるで真夏のような暑さでした。


このところ、大変暑い日が続いています。
昨日は平日のお休み日。
ひとりで家にいる時は、基本的には扇風機のみで過ごすのですが、昨日は朝から30度近い気温。さすがに干からびてしまいます(^^;
どこか外の施設で涼もう、と出かけることにしました。


ランチやお茶の約束をしている地元の友人と出かけようとも思ったのですが…。
ごめんなさい!
このところ、週末の休日も「○○のために」がつく外出が続いたので、「久しぶりに自分ひとりのために時間を贅沢に使おう」と、エネルギー充填のため、深谷まで足を運ぶことにしたのです。


東大宮から宇都宮線で「大宮」に出て、高崎線に乗り換えて…。
大宮から飛び乗った高崎線は運悪く「籠原」どまり。
途中で乗り換えて「深谷」へ。片道1時間半弱の電車の旅は、ちょっとしたピクニック気分でした(^-^)
煉瓦造りの駅舎を出て階段を下り、東口ロータリーに出ると真夏の暑さ。溶けてしまいそう。日傘をさしてずんずくと歩き始めました。


駅前ロータリーにあった渋沢栄一翁の像。


こちらは夕暮れ時の一枚。うしろ姿です。
彼の目に、今の日本はどう映っているのでしょう…


実は、深谷シネマさんには以前何回かお邪魔しています。
☆2008年『水になった村』を観にいった時の日記↓
http://d.hatena.ne.jp/orange_cake/20080129


当時は、まだデジカメじゃなくて携帯電話のカメラで撮影した小さな写真が大半でしたっけ。小さい写真ですが、「銀行跡地」を利用した以前の映画館なのがおわかりいただけるでしょうか?
ドキュメンタリー映画をかけていたにも関わらず、50席の館内は、ほぼ満席状態でした。大勢のお客様のあたたかい熱気が心地よく感じられる、とても居心地のよい空間だったのをおぼえています。


2010年、市の区画整理のため現在の場所に移転。
酒蔵を改造した新しい映画館にお邪魔するのは初めてなのでワクワク。
しかも、上映されている映画『クレアモントホテル』は、昨年、岩波ホールにかかっていた時「観たい!」と思っていた作品なのです。


駅から歩くこと10分弱。


お・・・見えてきました!


ん? 「豆腐」の文字が…。映画館はどこ?


おお、矢印が…(涙)


ホッとしながら進んでゆくと…あれ? お休み処?


ちょっとドキドキしながら進みます…


…あ、ありました!


映画館の前には、テーブルと椅子も用意されています。
お天気のよい日には、ここで観終わった映画の感想をゆっくりおしゃべりするのも楽しそう♪


こちらは受付の様子。

立派な映写機が飾られていました。
カウンターには飴も。あたたかな心づかいがうれしい(^-^)


受付左側には、飲み物の自動販売機が見えます。
ん? 何やら素敵な空間が・・・


入口入って左側には、こんなステキな小部屋がありました。

本棚には、思わず手に取りたくなるようなタイトルの本が並び、避暑地のロッジを思わせるような椅子に腰かけると、そのまま何時間でもボーっと座っていられそうでした。この場所はコミュニティスペースになっていて、映画館にいらした皆さんの交流の場所になっているんですね。


こちらは、入口右手の通路から入口を眺めた一枚。

映画に関するさまざまな情報が、壁に楽しく掲示されています。
ひとつひとつの掲示物に目を通しているうちに、時はあっという間に流れてゆきます…。


午後一番の上映の部は13時30分から。
映写が開始されてすぐ、少し遅れて入場してらしたレディ達がおられました。
小さな声でお話しされている内容から、お二人のうちのどちらかがおみ足の調子がよくないらしい…。しかもはじめていらした方のようで、真っ暗な中、館内の様子がよくわからないようでした。


私は通路から1席置いた場所に座っていたのですが、お二人のために席を移動し、通路側にご一緒に座っていただくことに。このお二人との出会いもまた、深谷のよい思い出となるのでした…。


さて、『クレアモントホテル』について。
2005年に制作された映画で、ロンドンが舞台。
ホテル暮らしの老婦人と小説家志望の青年が偶然出会うところから、この物語は始まります。夫人は思い出を紡ぎ、青年は彼女との出会いと交流を通して人生を知ってゆき…。


私が言葉をつくすより、予告編をご覧いただいた方が映画の手ざわりはおわかりいただけるかと思います。



サラ・パルフリーを演じるジョーン・ブロウライトは、ローレンス・オリヴィエ夫人で、もともとは舞台の出の人。気品があるのにお茶目な面も持ちあわせていて、ワーズワースの詩を諳んじている英国女性の素敵さが、彼女の立ち居振る舞い、姿かたちすべてから溢れてきて見とれてしまいました。
「こんな女性になりたい」と前から思っていた全てが、サラというキャラクターになって目の前に現われてくれた感じ。そうか。こうなりたかったんだ、と確認したら、とても気持ちが明るくなりました。


がっかりするような現実に出くわしても、サラは愚痴をこぼさず、ウィットにとんだ言葉で自分の人生・時間を楽しんでゆきます。しかも肩肘張ったそれではなく、ごくごく自然で、それでいて自分をしっかり保っていてとても小気味よい。
年を重ねた女性ならではの、包容力。そしてあたたかさ。磨かれた魂の豊かさは画面から溢れるほどに伝わってきました。

そしてサラに偶然出会ったルードヴィッグもまた、同じ美しい魂の持ち主。
美しい面立ちを持ちながら、イマドキには珍しく礼儀正しくジェントルで、しかもサラと同じように詩を愛する心を持つ青年。


年齢や性別を超えて、同じ輝きを持った二人の魂が交流を重ねるのに時間はあまりかかりませんでした。


ああ、こういう繋がりって本当に素敵だなぁ、とため息が出たんです。
私がずっと求めていたのは、こうした人と人との出会いなんだろうなって。
恋愛モードいっぱいの映画もたまには良いけれど、もっと心の奥深いところで、とても静かに繋がっている、そうした人と人との絆の物語をゆっくり味わいたかったんですね。


二人は、お互いがお互いに対して「何をどう感じているか」をとても丁寧に伝えようとします。言葉もしぐさもとてもとても大切にして…。


毎日、ネットや実際の生活の場で沢山の言葉のやり取りをしているけれど…。
あの二人のように、心をつくしてきちんと相手に伝えることが出来ているかしら?言葉をおもちゃのように扱ってはいないかしら?


自分に残されている、あまり多くはないはずの時間を考えると、人とつながるための言葉を粗末に扱うことはとても出来ないとしみじみ思いました。そして、言葉だけでは伝えきれない想いがあることもまた確認して…。


エンドロールが流れて、さまざまな物想いに耽っていると、お隣の席のレディお二人が話しかけてきました。お話しをうかがうと、なんと!お二人とも80歳代とのこと。
映画のはしばしで、ささやくような声で微笑ましい感想が聴こえてきていたのですが、その瑞々しい感受性と実年齢のギャップにちょっとビックリしてしまいました。


主人公のサラが、ある人の申し出を断る際に放った印象的な言葉があります。
「誰かの娘でも妻でも母でもなく、残りの人生は“私”として生きたい」。


この言葉が流れた時、私もお隣の席のレディ二人も、思わず強く頷いてしまいました。
そして、“私”として生きる時に、真に自分の“たましい”を認めてくれる存在があったなら、そんなことも三人して思ったのが隣どおしに座っていてわかったのもまた不思議な体験でした。


どうやら人はひとりでは生きてゆけない生き物のようです。
しかし、寂しさや刹那の感情だけで繋がった絆はもろくはかなく崩れてしまう。
たとえ姿形がこの世界から消えたとしても、たましいの深い部分で理解しあい、心を開いていれば、そのつながりは決して消え去ることはないのだ…と。
映画を見終わった後、心の中はとても穏やかでまるで洗髪したてのようなさっぱりとした気分になりました。今まで悩んだり迷っていたことの大半は、どうやら形がはっきりわかり処分することが出来たようです(笑)


深谷シネマ、来週の上映は「英国王のスピーチ」。
イギリス映画に登場する「気品と誇りを失わずに生きる人々」のひたむきな姿が私は好きみたいなので、来週もまた深谷に足を運びそうな気がします。
願わくば、来週はあまり暑くなりませんように(^-^)


クレアモントホテル オフィシャルサイト
http://www.cl-hotel.com/


○酒蔵の映画館 深谷シネマ
深谷市深谷町9-12 TEL:048(551)4592
http://fukayacinema.jp/


※『クレアモントホテル』は、6/26(日)〜 7/2(土)まで。
[上映時間] 10:30- / 13:30- / 16:30- / 19:30-


そうそう。
シネマの入り口にあった「お豆腐やさん」で、こんなものを買いました。
味噌が練り込んであるクッキーは絶品♪おからケーキもとっても美味しかったですよ。