まどろむまどログ   - 「快」を求める日々の記録 -

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合言葉は“Si Puo Fare!(やればできるさ!)”

「上尾に『まちの映画館』をつくる会」11月ミーティングの折、深谷シネマ館長・竹石さんが持参して下さったチラシの中に、心惹かれる作品がありました。
それが今日観てきた映画『人生、ここにあり!』というイタリア映画。
今年の7月から「シネスイッチ銀座」で上映され、その後、全国各地で上映が続いています。
11/25(金)まで川越スカラ座で上映されていると知り、本日(11/23・祝)観に行ってきました。


実家が若葉にあるので川越は車ではよく通っている場所です。
しかし、今日は私一人の外出のため電車での移動。
川越駅から東武バスに乗り「一番街」で下車。
あとは徒歩で映画館を目指します。
休日とあって、川越の街は大勢の人でごった返していました。
道に迷わなければいいんだけど…車での移動では見過ごしていた様々なことに目を留めながら、川越の街を歩きます。


さすが蔵造りの街。あちこちにこのような建物が・・・


人力車も走っています(^-^)


川越スカラ座さんへと向かう途中にある「時の鐘」


下から見上げると意外な大きさにビックリ


あまりの人出に方向感覚が狂い、曲がる路地を間違えたのか、ちょっと不安になってきました…
お店で道を確認しながら進むと…あ。看板があった!


おお!映画館が見えてきました(T_T)


次回予告案内板を眺める人も


予告案内板はこんな感じ。
映画館に来たんだなぁ、とじわじわ実感(^-^)


映画館入口


◆川越スカラ座
【住所】埼玉県川越市元町1-1-1
【TEL】049-223-0733
【URL】http://k-scalaza.com/


13時からの上映時間ぎりぎりに間に合いました。
お客さんは20人前後入っていたでしょうか。
私は一番後ろの席に座りました。
さほど広い空間ではないので、最後列でも画面との距離がほどよくゆったりと鑑賞することが出来ました。まちの映画館らしく、ひざかけ(無料レンタル)や使い捨てカイロ(有料)などのサービスも。
アットホームな環境で映画を楽しむことが出来たのは、とてもうれしかったです。


さて、今日観た映画のあらすじなど。


この映画は実話を基に製作されています。
1978年、「自由こそが治療だ」という考え方に基づきパザリア法が制定され、イタリアでは次々に精神病院が閉鎖されてゆきます。「パザリア法」とは、1978年に公布された世界初の精神科病院廃絶法(180号法)の通称。提唱した精神科医の名前にちなんでの通称だそうです。


なんと、革新的な治療方法でしょう!
この法律については随分昔に友人から聞いて知ってはいたのですが、実際の一端を映画で垣間見ることができるとは思ってもいませんでした。


法施行に伴い、病院から出た元患者たちの受け皿として用意されたのが「協同組合」。
この映画は40年前にトリエステで生まれた組合の子孫にあたる組織「協働組合180」が舞台になっています。医師の処方による投薬を受けながら、切手貼りなどの慈善活動をして無気力に過ごしている元患者達のところへ、所属していた労働組合から異端児扱いされ異動を命じられた主人公・ネッロがやってくるところから物語は始まります。


「一緒に働くなら自己紹介から」とひとりひとりの話に耳を傾けるネッロ。
少しずつ組合員と触れ合いながら、おのおのの特技や個性を発見し、「組合員会議」を定期的に持つことで、どんどんメンバーの声も引き出してきます。


例えば、所定の位置に張られていない切手も、封筒を束にして持ってパラパラめくると…。
連続したひとつながりのモチーフになって動いている。
食事でスナックのかけらをモザイク遊びのように美しく並べる者もいる。
そうした特性を発見し、ひとりひとりの声や行動に心を配り受け入れながら、ネッロは単調な施し仕事ではなく「本当の仕事」をしてはどうか、と組合員に提案を持ちかけるのです。
喧々諤々、好き勝手な意見が出つつも、様々に出されたアイデアの中から「寄木細工」の仕事をすることが採択され、無謀とも思える挑戦が始まり…


まだご覧になっていない方のために詳細は控えて作品のご紹介はこのくらいにしておきますが、重苦しくなりがちなテーマをテンポのいい脚本と、こだわりのキャスティングで描ききっていて、見終わった後に清々しさが残る素晴らしい作品でした。


オーディションには1年以上を費やし、また出演者全員に数か月に及ぶ精神保健施設などでの研修も実施したというだけあって、実力派揃いの俳優陣はどれも味わいのある個性豊かな顔ぶれ!
端正な顔立ちだけの俳優ではなく、顔に生きてきた月日や想いが刻まれている、イタリア映画らしい人間くささが漂う布陣。個性的な役者さん揃いで、どのキャラクターも大好きになりました。


また、映画の中に登場する洗練された調度品や美しいイタリアの景色、アップテンポでオシャレな音楽にも魅了されました。ステキなセリフもポンポン飛び出してきます。


いくつも心に残る言葉があるのですが、一番印象に残ったのはやはりラストシーンかな。
理事長が新しい仲間を迎えるときの、あの挨拶は一生忘れないことと思います。
イタリアの懐の深さと、人と人が触れ合うということの一番根本みたいな部分があのシーンにぎゅっと凝縮されていました。


昔、友人からこの法律の話を聴いたときには「夢みたいな話!長くは続かないんじゃないかしら」と思っていたのですが、イタリアは1998年の12月で全ての精神病院をなくしたそうです(映画のパンフレット8Pより)。
ネッロのような懐深く、偏見のまったくない情熱の人の協力があればこそ、成しえた事業なのでしょう。
あらためて「事業経営の難しさ」みたいなものも実感しました。ひとつのことを実現しようと思う時、ただ闇雲に突き進むだけではダメなんですね。その場所にいるすべての人の心がしっかり見えていないと、どんな素晴らしいアイデアもなかなか形にはならないものなんだなぁ、と、とても大切なことにも気がつかせてもらいました。


合い言葉は“Si Puo Fare!(やればできるさ!)”だけど、それは「ひとりではなしえない」。人と人とのつながりがあればこそ「やればできる」んですね。


もう一度味わい直したいセリフや場面がたくさんの作品。
DVDが発売されたら購入したいと思います。


◆日本語版予告編↓


○『人生、ここにあり!』公式サイト
http://jinsei-koko.com/


[追記]川越シネマの「お手洗い」前には、こんなポスターが張られていました(^^

素晴らしきかな、人生!